心理測定: 2005年11月アーカイブ

得点の差

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10月末に宣言したものは11月頭にとりあえず何とかしてみました。まだまだ練る部分は多いのですが・・・(それでも締め切りオーバー(^_^;))

今回は 得点の差 についてです。

最初に
今回の話は 得点の差をとることを否定するものではありませんので,そのあたりはご理解頂きたいと思っております。

心理学の研究では調査を行います。
そこでは,多くの場合 尺度 を用いて目に見えない潜在特性を測定します。

僕自身,尺度の研究をしているわけですが
最近,よく疑問に思うことがあります。

例えば,ある人に対して同一の尺度に回答してもらいます。そして

 時期A での得点が10点 時期Bでの得点が12点だったとします。

多くの場合,変化を捉えるために
12 - 10 = 2 という差得点を算出し
その差得点をもってその人の変化量とします。

まぁ,これは普通の発想ですし,
至極当然の成り行きだと思います。

もう一つ例を挙げます。

植物の成長を観察した時に,
時期Aでは30cm 時期Bで45cmだったとしたら
成長分は15cmです。
この場合は,変化量と考えて全く問題ないですし,妥当だと思います。

心理尺度の得点の差をもって変化量として
扱うことは,植物の例と同様に妥当なのでしょうか。

正直,多少乱暴な気がしています。

この2つを尺度水準の話で比較すると,
植物の方は明らかに間隔尺度水準ですが,
心理尺度の方は間隔尺度とは言えず
順序尺度水準です。

まず,この点で心理尺度の得点の差をもって
そのまま変化量とみなすことは多少躊躇します。

さらに,心理尺度の信頼性という点においても
ためらいがあります。

植物を ものさし で測定した場合であっても
誤差は生じるでしょうが,
これは心理尺度の場合の誤差とは比べものになりません。

心理尺度の場合,
時期A の 測定において (それなりの)測定誤差が生じます。同様に時期B の測定においても(それなりの)測定誤差が生じます。

つまり,誤差を含んだ得点 から 誤差を含んだ得点の差をとるわけです。これがどのような影響がでるかという点が問題です。

じゃぁ,どうすればいいか といわれても困るのですが,
安易に差得点をとって
それを絶対的な指標として扱うことは
注意が必要なのではないだろうか
ということを考えています(誤差があるということは認識しておく必要があると思います)。

得点の差と同様に,
尺度得点に何らかの重み付けをして得点を変換するということも安易にはできないことだと思います。

学部の頃は,“これでいい!!”と考えて,積極的に支持していた(?)のですが,
考え方が変わってきました。
(以前の自分と矛盾しています・・・。
数年前に書いた卒論とか見たくありませんし・・・)

結局,危険性を認識した上で分析・解釈を行うことが重要なのだと思います。

この辺りは古典的テスト理論で議論されることなのですが,直感的に考えてみました。

くれぐれも 得点の差をとることを 否定しているのではありません ので・・・

追伸:非常勤など来年度のスケジュールがだんだん見えてきました。かなりハードかも・・

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